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「行くか。」
「何処に?」
「前言ってただろ?」
「あぁ、あそこ。」
「そう。」
もしかしたら私も言葉足らずかもしれない。
でもそんな私の言葉を何故か理解できる男。
お互い少ない言葉でも、会話が成り立つのは長年の....という物なのか。
「迎えに行く。」
「わかった。」
何時に迎えに来てくれるのか、きっと聞いても『そんなの適当だ。』と言われる。
だから私は朝からいつコイツが来てもいいように、準備して待っていなくてはならない。
「ねぇ。」
「ん?」
男はカップに薄い唇をつけながら、私の目を見た。
「病院は....?」
「午前行った。」
「そう。」
私が言った『そう。』は理解したという意味。
男につられる様に、私もカップを持ち上げ、グロスが剥がれかけている唇をそれにつけ、全く甘くない液体を口に含んだ。
何故か、いつもは美味しいと感じる筈の苦味が、苦しくて、溢れてきそうな気持ちを押し込めるように、それを飲み込んだ。
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