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三本の缶と一つの紙パックを取り出しかけて、今回のテストの間違いがふと頭に浮かんだ。手から缶が滑り落ちる。
あ、ミスった。あそこは、あれじゃなくて――。
後悔先に立たずである。しかも教科はあの眼鏡が受け持つ国語。
一応は文系少女の私が、国語でミスを犯すのは、結構な痛手だ。例えそれが、一問のそれでも。
――ヤバい、ミスった。うわあ、どうしよう。
取り敢えず、自販機から缶と紙パックを取り出して階段を下りる。ミックスジュースが温まってしまうのは避けたいので、右手にはコーヒーとココア、ミックスジュースといちごみるくは左手に。
職員室の扉は開いていた。
一応ノックを三回して、失礼します、と言ってから入った。
なんでもないように見せて。
ミックスジュースとお釣りの十円を社会科の先生に、いちごみるくを物理の先生に渡して、彼のいるべき席を見た。
いない。
「大河先生は外行ったよ」
……、
「あの野郎」
口から言葉がこぼれた。
荷物を持って職員室に行ったのは悪くなかった、なんて考えながら、彼の元へ急ぐ。
行き先は、校門の外の駐車場。
視界の端に彼を捉えながら、少し早足で歩く。
なに呑気に煙草なんか吸ってるんだ、眼鏡。
彼への苛立ちと、テストでミスをした自分への憤りと悔しさで、泣きそうになる。
彼の前に立つと、本人は煙を吐きながら一言、
「あれは嘘だ」
と言った。
彼の提議は、またしても突然だった。
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