坂の上の墓

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 花瓶を設置して、ぐるりと見渡すと掃除道具が酷く年期の入ったものだと気付いた。何故今まで気付かなかったのだ。スコップは錆びているし、クマの手は一部折れている。帰りに百均で買って今度持ってこようという話になった。 「僕も死んだらここに入るのかなあ」 夫ののびやかな声がする。夫は実家の墓の事を考えているようだ。不思議な気持ちだった。お婿さんに来てもらった夫。夫はまさか自分の名字が変わるとは思わなかったといつも冗談めかして言う。同居している私の両親とも今はまだ少し他人行儀で、距離を感じる。時間が経って慣れてきたら、もっと私たちは「家族」になれるだろうか。 一生懸命一緒に掃除をしてくれる夫を見て、しかし私はなんていい人と結婚できたのだろうとありがたく思った。しかも今時お婿さんに来てくれるなんてなかなか珍しい事だ。
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