囚われの君は願う

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◇  ガタン。木窓が跳ねられる。外から太陽の恵みが差し込んできた。 「さっさと起きないよ、グズ」  耳が長く尻尾がぴょこんと飛び出ている、使い魔のルーファ。悪魔に性別があるかは解らないが、見た目は女性だ。  いつまでも寝ているパートナーに、しびれを切らしてやって来た。口は悪いが気を使っている。 「こらっ、いい加減にしなさい!」  布団を剥いで鋭い声を刺す。ところがそこには辛そうに唸りをあげている男が居た。 「アトルシャン! ……これは、夢を使った伝心ね。誰でもすぐに受け入れちゃうんだから」  文句を言いながらアトルシャンの意識を引き上げにかかる。  放置していてもそのうち戻りはする、苦しんでいる顔を見たくないのだ。  ルーファは己を媒体とした魔法を使うのに、詠唱を必要とする。契約魔法の類いに相当するはずなのに。 「アトルシャン」 「……救うよ、必ず……」  夢にうなされている、口から漏れたのはまたそれだった。 「バカ、また一人でそんなに頑張ってるんじゃないわよ」image=499551688.jpg
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