囚われの君は願う

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「ラインベルガー様じゃな。どうも領地への人の出入りに厳しいと話もきいてるが」  領主の命令で関所は閉ざされる。それは権利の一つで、他人がとやかく言えることではないのだ。伝令だけは妨げてはいけない法があるけれども、一般人はただ通過出来る日を待つしかない。 「え、その人が助けを求めてるの?」 「ふぉふぉふぉ。求めているのは女性じゃよ。領主の居城、その奥深くに捕らわれている姫が居ると噂じゃ」  真相など誰も知らない。知っているとしてもそれはラインベルガー側の人間だけだろう。  悪徳領主が地位を利用して姫を捕えて城に閉じ込めている。どこのヒロイックサーガだと嘲笑してやりたくなる。 「はぁ……」  ところがルーファはため息をついてげんなりする。今の話のどこにその要素があったか。 「どうかしたかの?」 「いいえ、何と無く台詞が想像出来て。おじいさんありがと」 「いつでも来るとよいぞ。わしゃ暇してるんじゃ」  どうやら喋るのが好きなだけらしいことが解る。もう来ることもないだろうが、一応「そうするわ」返事だけはしておいた。
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