囚われの君は願う

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◇  淡い光が漂っているような不思議な場所。床や壁があるわけでもないのに、立っているし、景色は見えない。  意識はあるが、声を出すことが出来なかった。 「……て」  微かに人の声が聞こえたような気がした。気配はない、姿も見えない。  目は開いているはずだ、それなのに何かを見ているような感覚は一切ない。 「救って……私を……」  女性の悲しむ声が聞こえてくる。今度はハッキリとだ。 「私を救って……お願い……もう……」  悲しみの感情が伝わってきた。そんなものが伝わるなど初めての感覚だ。  やがて淡い光が消えると、暗闇に投げ出されたようになる。  手足はおろか、体が一切動かせない。やがて意識もはっきりとしなくなってしまう。  痛いとか辛いとかではない。むしろ心地よい浮遊感に近い。  そして、全てを失った――
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