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ルーファは自身が何故「また」等と言ったか解らなかった。彼女は記憶が欠落していて、アトルシャンが一緒に居る理由を知らない。
彼に尋ねても微笑むだけで語ろうとはしなかった。それが優しさから来るものだと、ルーファは感情で受け止めている。
「……ルーファ。僕は夢を見ていたみたいだ。とても悲しい夢を……」
ベッドで寝たまま、天井を見詰めて呟く。視界の端にルーファの顔が映っている。
「内容、覚えてる?」
夢による伝心は非常に便利だが弱点がある。遠く離れた面識もない相手を対象に出来る反面、夢の中で伝えたことは殆どが目覚めと共に記憶から消え去ってしまう。
「いや。でも、とても悲しいことがあった気がするんだ」
アトルシャンが涙を伝わせていた。感情の移入、伝心の限界。
「……もう、朝からなにしんみりしてるのよ! ほら起きなさい!」
無理矢理に漂う雰囲気を取り払う。彼の心を誰かに盗られたような気がしたからだ。
「うん、そうだね。おはようルーファ」
「ふん、遅いのよ!」
ぶつぶつ言いながらも、おはようを返すルーファだった。
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