ぬすみぐい

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 明けて『水曜日』になった。  やはり水曜日なのだ。起床し顔を洗った私は、冷蔵庫の中身を確認した。  野菜や肉が一日分入っている。二日置きにスーパーに行くため、だいたいのものは二日分買う。そして今日は水曜日。スーパーに行く日だが、冷蔵庫の中は空になっていない。昨日が火曜だったのは間違いない。だがスーパーに行ったのは月曜のはずだ。  ストレスか何かで完全に曜日感覚が狂ったのだろうか。いやしかし食事に関わることを間違えるだろうか。そんな疑念を抱きながら、ひとまず一日分の食材を買いにスーパーに向かった。  スーパーはいつものように年齢の差はあれ主婦とおぼしき女性が買い物をしている。平日昼間のいつもの光景だ。買う物の大半が事前に決まっている私は、手早く買い物を済まして、帰路についた。  とくに変わったことはないなと快晴の空を眺めながら住宅地を歩いていた。  そして、あの十字路に差しかかった。  正面から服装に見覚えのある老婆が歩いてくる。つい先日、背中を見た老婆に違いない。軽く会釈と笑顔をお互いに交わし、すれ違った。  今度はその変化に気がついた。  辺りは薄暗く空は白黒、やや強い雨が体を濡らしていく。  振り向くと老婆は黒い傘をさして遠ざかっていくのが見えた。  雨に濡れるのも構わず携帯電話を取り出して、確認する。 『木曜日』とある。  飛んでいる。一日分丸ごと。意識が飛んでいるのか何なのか。野菜や肉にまったく問題がないところを見ると、突っ立って意識が飛んでいたわけではないようだ。  雨に濡れるのも構わず自分の内へ外へ考えを巡らせ、自宅に戻っても、時おり雷鳴が聞こえる中、様々な可能性について考え、悩んだ。  食事はきちんと取ったものの、今日が木曜日であること、冷蔵庫の中にやはり一日分の余りができているのを見ると気分が沈んで仕方がなかった。
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