8(承前)

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 ぱちりとジョージが指を鳴らした。 「そうだ。くろがねで出来た宇宙船なら、光速の壁を超えられるかもしれない。光の速さよりも反応速度が速い素材なんだよね。時の壁さえ超えられるかもしれない。うーん」  ジョージが腕を組んで考えこんだ。 「というより逆に、超光速宇宙船の一部が日乃元に隕石となって墜落して、それが萬家の先祖によって三種の神器につくり変えられた可能性のほうが高いんじゃないか」  妹の駆化留(かける)が手を打った。 「それ、子どもの頃うちの研究所のおじさんから聞いたことがあるよ。三種の神器は星の船の欠片(かけら)だったって」  タツオは遠い目で鮨の出店の行列の先を眺めた。日乃元(ひのもと)防衛どころか『スターウォーズ』みたいに遠い銀河の話である。ある意味果てしないほどロマンチックな話題だが、自分たちは鮨5貫を乗せた皿をもらうために並んでいる。 「宇宙の話は、おれはどうでもいい。そいつは日乃元が地球をすべて手にしたあとの夢物語だろ。おれにとっては『須佐乃男(すさのお)』のほうが、よほど重要だ」  厳しい表情でその場にいる新任少尉たちをにらんだのは、右腕を軍用義手につけ替えたテルだった。 「おれにとって大事な情報は、くろがねをもたない世界の列強は『須佐乃男』みたいなロボット兵器はつくれないってことと、残されたくろがねでつくれるのは、もう一台分だけってことだな」
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