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 銀のススキが海原のように揺れている。秋は深まっているのだ。不二山の頂(いただき)にはうっすらと雪が積もっていた。  そこは北不二総合演習場の奥まった場所にある甲練兵区だった。タツオたち新任少尉は養成高校の戦闘訓練で着用していたのと同じ半透明の特殊プラスチックのボディスーツに身を包み整列していた。簡易型の演壇では逆島継雄(つぐお)少佐がハンドマイクを握っている。 「これより『須佐乃男』操縦者の戦闘訓練を開始する」  クニがちいさな声でつぶやいた。 「また戦闘ごっこかよ」  柳瀬(やなせ)情報部員の鋭い命令が飛ぶ。 「鳥居(とりい)少尉、その場で腕立て伏せ50回」  クニが数をかぞえながら腕立て伏せを始めると、逆島少佐がいった。 「その訓練服は養成高のもののグレードアップ版だ。きみたちの戦闘中のすべての音声と映像を記録しているし、生体反応も常時モニターしている。それに弱レーザー銃の攻撃を受けた場合は」  少佐が腕立て伏せをしているクニのほうを見てから、部下にうなずいた。 「17、18、19……痛ったたた!」  エビのように跳ねてクニが悲鳴をあげた。演習場の火山灰性の黒い土の上で転げまわっている。
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