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彼は優秀だ。成績も人望もある。そんな彼の言葉は、この学校というコミュニティにおいて大きな力を持つようだった。
教師は最後に、次の終業式には遅れないようにとだけ告げて、渋々と教室を出ていった。
すると途端に、教室はみるみる活気を帯びる。雑談に花を咲かせたくて仕方のない周りの皆たちは、移動の準備をしつつもあれこれと口を開いて、語るに忙しいようだった。
ただ、僕はもっぱらそれに耳を傾けるだけ。頬杖をついて、気のない視線を空気に溶かすだけである。
「織戸ー! ファインプレーだな!」
「ほんと! マジよくやったって感じ!」
一際目立って聞こえるのは、さきほどの委員長の行為に対する賞賛の声だ。彼を含めた仲の良い数人で集まって笑っている。こんな情景は、容易く予想できたものだろう。
またあるいは、過ぎたことには目を向けずに先のことを話す人たちもいる。隣の女子グループの声量も負けてはいない。
「終業式って言ってもねー。結局は、夏休みにどうとかこうとかっていう話でしょー?」
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