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周りからは次第に人が薄れてゆき、出遅れているらしい彼女たちの会話はより鮮明になって僕まで届く。未だに頬杖をついてボーッとしている僕も僕で、早いところ教室を出た方が良いのだけれど……。悠長なのはお互い様だ。
「あれっ! そうだっけ!」
「うわ、またなくしたの? 体育館シューズなんて大きなもの、普通なくならないでしょ。しょっちゅう鏡とかピンとかなくすの見てるけど、体育館シューズはさすがに驚くわ」
「うーん……仕方ないから今日はなしで我慢するかー……」
そうしてようやく、雑談中の最後の集団になっていた彼女たちも教室をあとにしてゆく。体育館シューズをなくしたらしい女生徒は、あまりショックそうではないが面倒そうな顔をしていた。
僕は、その会話の先が気になったわけではないけれども、目的地が同じということもあって、少しの距離を空けつつ彼女たちに続いた。
すると、話の行先は思わぬ方向へ進んでいく。
「あー、そういえばさー。こんな話、聞いたことない? この街に、何でも探してくれる探しもののプロがいるって」
「何それ、知らない。何かの噂?」
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