私は私じゃないの?

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記憶喪失。 そういうことが身近に起こるとは、思わなかったものの両親がいてくれて、献身的にもしてくれる。 お父さんもお母さんも毎日、病院に来てくれる。 お父さんは、私に可愛い服をよく買ってきてくれた私は気晴らしによく着替えて院内を散歩している。 だけど、可愛い服を着て歩く私を複雑な顔でよく見ている。 ある時、私はお母さんにそっと尋ねてみた。 「ねぇ、お母さん。どうして私が可愛い服を着るとイヤな顔するの?」 ベッドの横でりんごの皮を剥くお母さんは、はぁと息を吐いた。 「……あなたは、あんな可愛い服なんて着たことなかったのよ。お父さんは、可愛らしくなったって喜んでいるけど、私はあなたが別人になったような気がして……」
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