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「ほらほら、変な所で落ち込んでないで奥に行くわよー」
呑気な声で、落ち込む俺の背中をグイグイと押してくる。
「オバサン...居たんですか?」
呼んでおきながら、亜人三人衆を代わりに置いて何処かトンズラしたのかと思っていたのだがどうやら違ったようだ。
「呼んだの私よ?居ないと話にならないと思うんだけど...居ない方が良かったかしら?」
また変な事を...と、呆れ顔で当然の事を言う。
「いや、入った時から見えなかったのでどっか行ったのかと...」
ちょっとそこまでって感じでな。年寄りは散歩が趣味っぽい所があるし。
「...うん、散歩が趣味の人も居るとは思うけど、少なくとも私は家でゴロゴロしていたいタイプだから一括りにするのはやめてね?」
「ん、何の話をしてるの?二人とも」
一連の流れを見ていたカヤが、理解が出来ないと言った表情で訊ねてくる。どうやら、カヤもオバサンがどう言う思考の汲み取り方をしているのか知りたい様子だ。
奇遇だな...俺も、声に出してないのに会話が成立する謎が知りたい所だったんだ。ユズハ曰く、顔に出てるみたいだけどな。
「こっちの話だから気にしないでいいわよー、ノワールちゃんも出て来なさい」
「うぅ...恥ずかしい...」
俺を無理矢理椅子に座らせて、真っ赤になっているノワールとその仲間達も同じ席に座らせる。これって...同じ話するつもりなんだよな?嫌だな...帰りたい...
どうやら、俺にとっては嬉しくない展開となりそうだ...
これからの事を察して、少なくない絶望感に苛まれているとオバサンが本題を切り出した。
「お兄さんは、約束覚えてるかしら?」
「...ええ」
やっぱり、そういう事らしいな...マジかー...
「四日後、予定空いてると思うけど...調査に行ってもらうわ」
なぜ空いてる前提で話を進めるのか。
...空いてるけどさ。
「りょーかいです。俺と店主の二人でいいんですよね?」
生返事をして、先手を打つことにした。暗に、俺は嫌だと伝える。
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