いざ、受験へ

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 そして受験を終えた私は正門へ向かった。正門には見覚えがある人物が待っていた。 「よう、直香。どうだった? 今日はうまくいったか?」  滝崎先生だ。階段から落ちる前のことは覚えてないが。たぶん私が教わっていた塾の先生だ。  明るい口調で声をかけてくれたが、おそらく私の緊張症とやらを心配していたのだろう。どこか様子を探るような聞き方だった。  だから私は安心させてあげようと、それはもう大きい声を彼の明るさを上回る照度で返した。 「はい、ばっちりですよ! もう合格間違いないんじゃないですか? かなりできましたよ! 8割近く取れちゃいましたかね? 春から大学生決定です!」  そしてVサインを滝崎先生につきつける。なぜか、まわりにいた他の受験生がぎょっとした顔で私を見てきたが意味がわからないので私は気にしない。 「おいおい、直香。明日もあるんだぞ。今日がばっちりでも油断しちゃダメだ。でもお前からそんな台詞を聞けて俺は嬉しいよ」  私は一瞬頭が真っ白になる。てっきり今日で終わりだと思っていた。 「え……。明日もあるの? 今日で終わりじゃ……」 「今日は国語と数学、明日は理科と英語。今日できたからといって、気を抜くんじゃないぞ」 「ひええ。明日もあるんだ……」  今日の疲れが一気にどっと襲ってきた。試験ができたっていっても、けっこう難しかったから疲労感は半端ない。明日もこれを繰り返すと思うと少し憂鬱にはなった。まあ翌日の試験もバッチリだったんだけどね!
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