受験生なのに、階段から落ちました

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 はい? この男性は何を言っているのだろうか? 受験、は意味がわかるが、トウダイ? トウダイとは一体何のことなのだろうか。初めて聞く名称だ。  東大受験という言葉を聞いて、周りを取り巻いていた野次馬がおおっと声にならない小さな歓声を上げる。私のパンツを見ていたアイツとアイツも私を見る目が変わった気がした。  受験という単語、周りを取り巻く学生風の野次馬から察するに、どうやらここは塾の中のようだ。たぶんみんな受験生で、私は明日トウダイという学校の試験を受ける、そういうことだろうか。目の前の男は周りの野次馬に比べて大人びているから教師なのだろう。  私は思わず聞いてしまった。 「トウダイ? トウダイという学校を私が受けるのですか?」 「は? おい、お前、本当に大丈夫なのか? 早稲田も慶応も発表があったとこは全滅だったし、これから発表のとこも自己採点で絶望的なんだぞ。明日も例の状態だったらやばいんだからな」  彼のこの台詞を聞いた野次馬共が、やはりね、とか、そうだろうな、とか無言のままそんな表情を浮かべたのを私は見逃さなかった。私を見る目が尊敬から一瞬で見下す目に変わっていた。  それより気になるのが『例の状態』ってやつだ。私は男に尋ねた。 「例の状態……とはなんでしょう」 「極度の緊張症で実力が発揮できないってやつだよ」 「なるほど、それはたいへんですね」 「なに他人事のように言ってるんだよ。明日ダメだったら本当にやばいって。お前は普段は頭いいんだけど、本番にからきし弱くて実力を発揮できないんだよ。実力さえだせれば……」 「大丈夫でしょう。普段通りやればいいんじゃないですか?」  あっさり答える私に、目の前の男はいきり立つ。 「だから! それができないから対策を考えようってことだったろ。それで考えたのが、あの対策だ。お前、それも忘れてないだろうな……」
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