空をかけるひつじ

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空をかけるひつじ

かずみは、右手の指先で持った薬瓶をカラカラと振った。 一体いつの間に、人間は睡眠薬で死ねなくなったのだろう。 二か月かけてため込んだ薬を一気に飲んでみても、かずみに与えられたのは、堕ちるような深い眠りと、激しい頭痛。 そして、 「びっくりしたよ。呼んでも揺すっても、かずみが起きないから、ボクは、ボクはもう、てっきり……」 男なのに、水晶のような涙をポロポロと落とす、恋人だった男、 ヤスノリの泣きごとだけだった。
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