空をかけるひつじ

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かずみの耳には、ヤスノリが田舎で婚約を解消したという情報は、聞こえてこない。 いちいち『元』恋人の耳に入れなければならない、話しではないのかもしれないが、 それでも、 「来てくれたんだ」 かずみはもう一度言った。 ヤスノリは、うん、とうなずく。 「ボクが頼りにならない男だってことは、ボク自身がよくわかってる。 だけど、かずみがこんなに苦しんでるのに、側にいられないことの方が、ボクにはもっと苦しいんだ」 優しすぎるほど、優しい男。 まるでひつじのようだ。 ふわりと温かくて、まつ毛が長い。 いつだって、優しげにこちらを見つめているだけ。 眠る時に数を数えるぐらいしか役に立たない男。 だけど、そんな優しいだけの男は、時として、周りの人間を不幸にする。
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