1.金色の雨が告げた未来

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徳力の名前じゃない。 もっと俺自身が 大きくならないと、 誰も俺の耳を貸すことはない。 「神威、入るぞ」 声の後、すぐに襖が開く音がして 侵入してくる飛翔。 慌てて噛み切った口元の血を確認する俺に アイツは毒づきながら 傷口だけを確認した。 「これくらいなら粘膜の再生能力さえ高める食事に  切り替えれば、落ち着くだろ。  義母さんに言っとく」 「てめぇは、いちいち心配性なんだよ。  それより、少しは寝たのかよ。    昨日は当直だったけど、  その前は帰って来てなかっただろ」 「ガキが気にしてんじゃねぇ。  会議始まるんだろ」 そう言ってアイツは俺の頭を からかう様に撫でつけた。 「飛翔、髪が乱れんだろうがっ」 思わず素の反応を返しながら、 手櫛で髪を整えると、 飛翔と共に会議室へと向かった。 その場所で、もう一度 華月と万葉に 告げたことと同じ内容を語る。 村の議員たちは一斉に 頭を項垂れた。 「御当主。  長々の話し合い、お疲れ様でした。  幸いにして、山辺地区にはあの災害の時より  誰一人、生息しているものはおりません。  山辺のものたちは、飛翔様の迅速な行動により  今は飛翔さまのマンションや、  徳力が持つ、それぞれの家にて  新たに生息しております。  万事、その日が滞りなくすぎますように  私共も肝に命じておきたいとおもいます。  水に沈む、山辺の御霊を供養すべく  式典の支度も整えようと思います。  そちらは宜しいでしょうか?」 シーンと静まり返った空間に、 全ての責めを覚悟したかのように 万葉が淡々と、俺に意見を切り返す。
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