15.飛翔の覚悟 

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だから…… それらのない世界に焦がれ続ける。 真正面から責め続けられる その時間だけが 俺が生きることを許してくれる そんな気がして。 カムナが齎す闇は現実を突き付け、 俺自身を突き刺しながら何処か優しい時間。 そんな時間を続く中で俺自身の意識が遠のいて崩れ落ちていくのを いつも感じていた。 ☆ 「神威、起きろ」 意識の向こう側に声が聞こえる。 『雷龍 宵玻。  力を貸せ。  兄、信哉の名のもとに』 その声が……俺が良く知る、 飛翔の声だと気が付くのに時間はかからなかった。 直後、外で雨音が響き渡る。 その雨音が、社を包み込み 水気が社の中に流れ込んでくる。 水気は何処か穏やかで優しいものだった。 誘われるようにゆっくりと開いた瞳。 その先には札らしきものを手にしながら、 ぐったりと床に手をつく飛翔の姿があった。 「……飛翔……」 声として発しきれない声で 絞り出すように呟く。 札を片付けて俺の方を振り向いた 飛翔の呼吸はかなり乱れていた。 それでもアイツの腕は俺の方へと伸びて来る。 それは出逢った頃から 変わらないアイツの優しさ。 バイタルを確認して安堵したのか、 アイツは俺の隣、ゴロリと横たわった。 「馬鹿かよ」 天井を向きながら吐き出した言葉。 素直になれないのはアイツ譲りかよ。 そんな風に感じながら、いつの間にか、 俺の中で存在がデカクなってる 隣の奴の器の大きさを感じていた。 次第に呼吸を整えることに 成功していく飛翔。 隣の息遣いが安定した頃、 アイツは呟くように吐き出した。 「雷龍……とてつもない力だな」 その言葉で、あの雨を齎して一瞬のうちに 闇を霧散させた存在がご神体の力に寄るものなのだと すぐに理解できた。 「降ろせたんだ」 自分の意思でおろすことが 出来ないのはまだ未熟な俺だけかよ。 責めるような気持ちが 俺に闇を抱かせる。 「俺の力じゃないさ。  全部、兄貴が……お前の親父が  仕組んでいったことだ。  俺は今も兄貴に守られているに  過ぎないんだよ」 そう呟いた飛翔の声は、 いつもと違ったトーンで弱々しかった。
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