17.雷龍 翁瑛降臨

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「起きれますか?」 再び、徳力に使えるものとしての口調に 切り替わった陸奥に俺は頷く。 あんなにも重苦しかったのに今はそれを全く感じさせず、 すっきりとしていた。 「神威くん。  入っていいかな?」 ベッドから起き上がった俺の元に姿を見せたのは由貴先生。 「驚いたねー。  顔色もかなり良くなったね」 そう言うと、いつも飛翔がしていたみたいに 俺の傍に近づいてくると、 手慣れた手つきで俺の状況を確認していく。 「由貴さん……アイツは?」 「飛翔はまだ眠ってる。  何が原因かは私にはわからないけど  穏やかな笑みを浮かべて眠ってるよ。  何かを成し遂げたみたいな満足そうな笑みを浮かべて。  バイタルも乱れてない。  だから時間が経てば起きてくれると私は信じてるよ」 由貴先生はそうやって飛翔が眠っているのか、 右隣の部屋の壁に視線を向けた。 「信じて貰えないかも知れないけど。  アイツの体から青白い光が抜き出て俺の中に入り込んだんです。  そしたら……苦痛とか痛みとかそう言うのが一気になくなって……」 アイツが居なかったら、 今も俺はこうしていられただろうか? 桜瑛を悲しませずに、 隣で笑っていられただろうか? 「そう……飛翔が神威君を助けたんだね。   誰かの犠牲の上に成り立つ守護があり得ないことは、  飛翔が一番感じているんじゃないかな。  だから……飛翔の事は私に任せて、  君は今、自分がやるべきことをやっておいで。  大切な友達を助けたいんでしょ。  今の神威君の目はあの時の飛翔の目に少し似てるよ。  君を助けたいと覚悟を決めたあの時の飛翔に。  今日、飛翔は鷹宮に連れて帰る。  向こうと連絡をとったから。  李玖さんも心配してるしね。  ここでやるべきことが終わったら、  自分の意思で帰っておいで」 由貴先生はそう言うと部屋を後にした。 
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