1.金色の雨が告げた未来

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季節は巡り…… 中等部を卒業した今年。 今なら…… 飛翔との約束を果たすのも いいかも知れないっと 自分自身が納得して 決断出来るようになった。 高校生活の三年間のみ、 通いなれた神前悧羅学院を離れる。 そして大学部から、 また今まで通り、 神前悧羅学院へと通い続ける。 「覚えてたか?」 「うん……三年だけ。  三年だけ、  今より少し冒険がしたい」 「あぁ。  手配しておく」 そう言うと、 飛翔は遠い昔を思い出しているのか、 何処か懐かしそうな貌(かお)を見せた。 その後、 ゆっくりと墓参りを済ませた俺は、 九年前、左手に出来た 小さな龍の刻印を見つめる。 あの日以来…… その左手から、 迸る力を感じることは殆どない。 ただ……時折、 体の生気を全て吸い取られたように 意識を失って倒れた日が何度かあった。 それがこの刻印によるものなのかどうかは、 今の俺には、 断言することは出来なかった。 だけどその刻印は、 今も俺の左手に刻まれたままだった。 そして…… その刻印を飛翔もまた 刻まれた存在。 「飛翔……  左手のあの刻印  どうなった?」 「さぁな。  気にしたこともない。  静かなもんだ」 飛翔はそう切り返しながら、 ゆっくりと俺の前を歩き始めた。
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