18.未来を誘う長として

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「涼夜っ。  起きろよっ!!」 叫ぶように体を揺するも、 涼夜は動かなかった。 「影宮。  雷龍さま、こちらへ」 そう言って俺たちを呼び寄せたのは 何時の間に辿り着いたのか、 俺を鏡の中へと誘った咲と和鬼。 「和鬼、力を貸して」 咲はそうやって呟くと、 首元に飾る勾玉にゆっくりと手を翳した。 勾玉から放たれた光は、 やがて咲の体から一つの剣を生み出す。 体内から出た剣の柄を手にして、 和鬼はゆっくりと抜き出した。 その光景は、何処か先ほど俺がした 宝剣の顕現か力に どこか似ているように思った。 「不思議ですか?  影宮」 「まぁな」 「この力は鬼の世で守られ続けた力。  鬼の世とはこの世界の裏側に常に位置する世界。  和鬼、見せて差し上げてください。  その方を巣食う、闇の本質を」 咲が紡ぐと、和鬼はその鬼狩の剣と呼ばれるその刀を ゆっくりと俺の方へと突き出した。 寸でのところで止められたその剣に映し出されるのは、 幼子の涼夜が、必死にもがき続ける様子。 『あっちに行けよ』 『ボクを傷つけるな』 『黒いものなんて大嫌いだ』 カムナの魔の手から必死に自我を防衛しようとしている 存在が姿を見せる。 コイツも一緒かよ。 刀を通して映し出されるのは、 涼夜の過去。
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