2.春休みのデート

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ようやく再会のキスを終えて、 アイツは慌てるように 俺から距離をとって 視線を外に向けた。 「何かあったの?  神威が突然電話してくるなんて」 俺に視線を合わせないままに 呟く桜瑛。 「……別に……」 逃げ道のような言葉で返事を返した俺に 桜瑛はサラに言葉を続ける。 「……嘘……。  パソコンでニュース見たもの。  神威の村、ダムの底に沈むって  書いてあったもの。  だからなんでしょ……」 隠したい現実。 覆したい決定事項。 俺が目を背けたい出来事を 真っ先に突き付けるように 切り込んでくるのは アイツの昔からのやり方。 「責めてるんでしょ……。  昔から何も変わらないもの。  幼い時から、ずっと近くで  神威を見続けてる私だもの。  神威が隠しそうなことくらい  わかるわよ」 そう言うと、 アイツは今度は俺に両腕を伸ばして、 膝枕するように頭を引き寄せた。 「貴方は何も悪くないわよ。  ダムの一件で、  神威が交渉を頑張ってたのは  私は知ってるもの。  被災した村の人たちの為に、  神威が頑張り続けてきた時間を  傍で見守ってきたんだもの。  許してあげなさいよ」 桜瑛の言葉は、 優しく俺の上に降り注いでいく。 出逢ったころから…… 桜瑛はいつもこうだ……。 俺が一番望む言葉をくれる……。
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