1.金色の雨が告げた未来

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「ご当主。  お疲れ様です。  もうすぐ徳力総本家のヘリポートへと  到着いたします」 悧羅学院悧羅校。 授業を終えてから、 一度、徳力本社ビルで仕事を終えて その後、業務提携中の企業との商談を終えて 今は総本家に向かうヘリの中、 シートに体を預けていた。 操縦する久松(ひさまつ)の声を受けて ゆっくりとヘリから地上を眺める。 広がるのは緑の絨毯。 そう言うと聞こえはいいけれど、 今俺の下に広がるのは、 九年前、水害の犠牲になった 阿部村(あべむら)。 飛翔こと、親父の弟である 早城飛翔(はやしろ ひしょう)と 再会するきっかけになった、 あの災害の被災地。 その日、時間を止めて人が入ることもなくなり 自然に帰った村。 その村が、今年の六月。 ダムの底に沈むことになった。
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