1.金色の雨が告げた未来

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災害の前から何度も議題には登っていた ダム計画の話。 親父の時代は、全て断っていたらしい。 この村全ては、 先祖代々神より託されし村だからと 説得を続けて。 だが九年前の水害により、 現状は変わり、この春よりようやく高校生となる 俺一人の未熟な当主の声など、 届くはずもなく、 三か月後にダムの底に 沈んでしまうことが決まった。 ただでさえ、住み慣れた村が水害の被害に会い 九年たった今も、元の村に帰ることが出来ず 一族が手配した生活空間で、慣れない暮らしを 強いてしまっている現実。 そして……その上に、 今後、精神的にも大きく負荷をかけるであろう 村のダム建設問題。 先祖代々受け継ぎ続けたこの広い故郷の 山の手の三分の一の土地は、 水の底に沈んでしまう。 その決定事項を俺は、 村人たちに伝えないといけない。 そんな気の重さを感じながら、 見下ろし続ける村の景色。 俺、徳力神威(とくりき かむい)は 特殊な家系に生まれた。 生まれた時から、 九年前のあの日まで、 村からに出ることもなく 生活を余儀なくされた。 雨が降り続ける日、 母さんも父さんも 俺の前から真っ白な着物を身に着けて 出掛けたまま帰ってこなかった。 その後、「おめでとうございます」と 押しかけられた村人たちによって、 この土地を守る当主となった。 徳力の当主には、 もう一つの意味があった。
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