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あの日、その場で命を落としていたことを思えば、
生き続けた九年間は、険しすぎる時間。
高校一年生への進学を間近に控えたこの四月。
ようやく当主としての役割が自分の中で
構築できるようになった。
その矢先に決定された、ダム建設の承認。
一度下された決定事項は、
今の俺では、どうすることも出来なかった。
ヘリはゆっくりと、
総本家の敷地内にあるヘリポートへと
着陸してそのエンジンを止めた。
「お帰りなさいませ。
ご当主」
ヘリの扉が開くと同時に、
俺を迎えて上品にお辞儀する女性。
この人が後見役の華月。
華月の後ろ、静かに控えるのが
サポート役の万葉。
そして……今、
叔父と言うよりは、
歳の離れた兄のような感覚で
頼っている飛翔。
この三人の存在が、
今の俺にとって一族を取りまとめるのに
必要不可欠な存在となっていた。
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