1.金色の雨が告げた未来

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「華月、飛翔は?」 「いらしてましてよ。  当直明けでこちらに来られて、  今は自室で仮眠しています」 「そう」 飛翔の仕事は医者。 鷹宮総合病院と言う、 個人経営の病院に雇われる存在だ。 「万葉、村の関係者を招集してくれ。  六月、ダム建設が決定した」 それを告げる言葉は、 俺自身の唇をかみ切れるほどに重い。 唇の端からツツっと流れ落ちる、 悔しさの滴を手のひらで拭うと 口の中に鉄臭さが広がっていく。 「ご当主」 心配して近づく、 華月の行動をゆっくりと制した。 「悪い。  少し力を入れすぎただけだ。  口をゆすいでくるよ」 そう言うと、建物の中に入って 自分の部屋へと直行した。 俺にもう少し 父さんみたいな力があれば……。 悔しさだけが今も 俺自身を縛り続ける。 自室の洗面所で、 口の中をゆすぎながら 鏡の向こうの 俺自身を睨み続ける。
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