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そのうえ。 「お一人ですか?」 だなんて。 なんという失礼な質問なんだと、若い男性スタッフを一瞬睨みつける。 受付での人数確認だというのはわかるが、もう少しマシな言い方はなかったのかと美晴は思った。 例えば「一名様ですね」と料金を払うだけにしてくれれば、飲食店や映画館みたいでそこまで気にならないと思うのだが…。 こんなささいな事でイライラしてしまうのは良くないと分かっているものの、小さな事が胸にチクリと刺さってしまう。 微妙な年頃なのだ、30歳になったばかりは。 と、いいわけを心の中で呟きながら、美晴は不本意な返事をし、チケットとパンフレットを受け取ると、そそくさと受付を後にした。 ちなみに、こんな最悪の出逢いが運命の出逢いに…的な流れは、映画やドラマじゃない限り有り得ない! ってことを分かってる、ということだけは先に言っておきたいと思う。 30年生きてきた経験がそれを物語っている。 25歳くらいまでは仕事と結婚の両立を…なんて甘っちょろい事も考えていた美晴だったが。そのくらいになると仕事を1人で任されることも多くなり、仕事と結婚どちらかを選択せざるを得なくなった。 結果はわざわざ言わなくても伝わってると思うが、それが、最近美晴をイライラさせてる原因でもあった。 30歳を過ぎて、今度は「仕事ばっかりしてるから結婚出来ないんだよ」と職場で言われるようになったからだ。 だから構わないで欲しい、というのが美晴の性格なのである。 自分で、とりあえずは仕事に生きる、という選択をしたのだ。 それはまったく後悔していない。 .
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