プロローグ

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僕が目を開けると、広がっていたのは、目を開けた事が疑われるくらいの一面の闇だった。 全身に痛みを感じるけど、その手足も見えないほどの暗闇。 痛みに耐えて身をよじっても、それに合わせてガサガサと周りから音がするだけで、体勢は変わらない。 何やら、狭い所に入れられているようだ。 どうして、こんなところに居るのだろう? そして、なんでこんなに身体が痛いんだろう? そう思い出そうとして、ふと思う。 ……そもそも、僕って何だっけ? 考えても考えても、なにも出てこない。 怖くなって、ここから出ようとするが、痛む体をいくら動かしても周りがガサガサと音をたてるだけ。 叫んでも、状況は変わらない。 ガサガサ、ガサガサと発せられる音が、闇だけの世界に響いていた。 どれくらい、そうしていただろう? 身体に力が入らなくなり、動く事さえだんだん出来なくなって来た頃。 ふと、身体が浮き上がる感じがした。 「なんだ、これ?」 そんな音と共に、ガサガサという音。 そして、光と共に僕の目に入ってきたのは。 大きな生き物の顔だった。 大きな生き物は、僕を見ると驚いた顔をし、 「うわ、子猫! しかも血まみれじゃん!」 そんな音をあげ、慌て出した。 「ええっと、病院! 動物病院ってどこだっけ!?」 激しく上下に世界が揺れる。 「はぁはぁ、待ってろ、今、助けてやるからな!」 息を切らせながら、僕を見てくる大きな生き物。 揺れる世界の中、その顔を見ながら、僕はゆっくり気が遠くなっていった……。
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