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芹沢くんのマンション近くのスーパーで車は停車した。
「人のモノ欲しくなるその癖、昔からだよな。いい加減にしな」
「それは文也ばっかりズルいからだよ。いつも、俺の欲しいモノ先に取っちゃうから…」
エンジンを切ってシートベルトを外しながら芹沢くんは尚くんに振り返った。
「自分の外見ばっか磨いても問題は中身なんだよ。そろそろ結婚も考えて付き合っていかないと。真剣に付き合える相手見つけろよ自分で」
「イツキさんは文也が良いの?」
「私は運命ってあると思うんだよね。尚くんもそういう相手が見つかるよきっと」
「俺も思う。偶然って必然だからさ。尚の事好きになってくれる相手が見つかるよ」
「リア充見せつけるなよ。何か俺、邪魔者みたいじゃん?」
「そうだよ。今夜は邪魔したのは尚だからな。夕飯は尚の奢りな」
「マジで?!イツキさんハンバーグ作ってよ目玉焼き乗ったヤツ」
「芹沢くんはハンバーグで良い?」
「イツキさんの手料理なら何でも良いよ俺は」
車を降りてスーパーで買い物かごに三人分の食材を入れた。
お会計はもちろん尚くんだ。
スーパーの中で周囲からの視線を感じたのは多分私の気のせいじゃない。
芹沢くんと二人だとこうはならなかったんだろうな。
問題児は自ら似せている尚くんだろう。
本人は慣れっこなのか平然と買い物していた。
足早に車に戻り芹沢くんのマンションに向かった。
「尚、お前一緒に居ると目立つって」
「何で?良いじゃん。悪いことしてないし」
「真似ばっかりしてたら彼女なんていつまでも見つかんねーぞ。」
「寄せてる俺よりも真似してない文也が良いって言われたんだもんね、軽くショックだわ」
だって、どんなに似てても本物じゃないもん。
尚くんのリクエスト通り夕食を作って三人で食べた。
芹沢くんと二人で後片付けをしていたら尚くんは先にシャワーを浴びてきたようで似せる為にしていたメイクを落としたら芹沢くんそっくりな素っぴんだった。
派手な原色のハーフパンツとTシャツに身を包んだ尚くんはリビングで実家から持ってきたノートパソコンで仕事をしていた。
「尚、パソコンで何かやってる時は集中してるからほっといてやって」
芹沢くんがそう言ったから私は食後のアイスコーヒーを入れて尚くんの座るリビングのテーブルの上に置いた。
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