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「そう言えば、文也くんの部屋って時計とか無かったけど、どうしてるの?」
「移動はほとんど車だから時計は付いてるし、家ではテレビかスマホか腕時計で済ませてるけど…」
「不便じゃなかったの?」
「慣れ…かな?」
「一緒に住むなら時計は置こうよ。目覚まし時計は私のがあるから良いけど」
文也くんは自分の腕時計を眺めた。
「必要かな?」
「あったら便利だよ」
私は煙草を灰皿に消して立ち上がった。
「飲み物持ってくるね?」
「あ、俺も行く」
二人でドリンクバーに飲み物を取りに行って戻ってきたら、テーブルに置いていた文也くんのスマホに不在着信を知らせるランプが点滅していた。
気づいた文也くんはスマホの画面を開いて確認すると、すぐにスマホの電源をオフにした。
「どうしたの?」
「尚だよ、どうせたいした用件じゃないよ」
しばらくして私のスマホから着信音が鳴った。
画面を見ると尚くんからだった。
出ようか悩んでいるのを見て、何気なく私の画面の着信相手を見たらしい文也くんは怒った表情で私のスマホに手を伸ばし聞いてきた。
「何で尚がイツキさんの番号知ってんの?」
「それは…」
ムッとした表情のまま私のスマホに文也くんが出た。
「もしもし、尚、お前俺のスマホ勝手に弄ったな?何で勝手にイツキさんと番号交換してんだよ?!」
どうやらバレてしまったようだ。
私のスマホでしばらく尚くんから言い訳を聞いていたようだが文也くんは自分のスマホの電源を入れた。
「用があるなら俺にかけてこい、イツキさんにかけるなよ、解ったな?」
通話を終了してスマホを返してくれた。
「尚から連絡きたんなら一言言ってくれても良かったんじゃない?」
「ゴメン、内緒ねって言われてたから言えなかった」
すぐに文也くんのスマホに尚くんから着信があった。
不機嫌なまま、文也くんは通話にして左手でスマホを耳に当てた。
「くだらない話なら切るぞ?…で?…あぁ…それで?…」
文也くんは相づちをうちながら、しばらく話を聞いていた。
どうやら、さっきの不動産屋さんが保証人である尚くんに電話をかけてきたようで、それを尚くんがお母さんに話したらしく、お母さんは二人が一緒に住むのは良いけど、文也くんに私を実家に一度連れて来るように言われたという内容だった。
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