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俺が高校生の時だったと思う。
信号に捕まらずに駅についたおかげで、いつもより一本早い電車に乗れた日。
彼女は既に電車に乗っていて、座席に座って本を読んでいた。
当時の俺は、ただの乗客としか思わなかった。
話す機会は無いし、彼女との接点は何もない。
何処から乗って、何処で降りるのかも知らず、知っているのは、静かに本を読む姿だけだった。
とびきり美しい訳でも、醜い訳でもない。
それなのに、頭から消えない人だった。
生まれてからずっと祖母と二人で暮らし、両親の顔すら知らないまま俺は育った。
子供の時は寂しい思いもした。
けれど、二十歳から独り暮らしで、はや五年。
一人にも慣れた頃、俺は彼女と再会した。
そして、
俺の人生は変わった。
高校を卒業して就職し、仕事を頑張る日々。
残業も少なくないし帰りの時間はバラバラ。
それでも朝は、学生時代と同じ電車に乗る日々が続いていた。
だけど、その日はいつもより遅い時間に電車に乗った。
普段と違って、家族連れやカップルが多く乗っていて、込み合う車内。
当然、あの日見かけた彼女の姿は無かった。
この日は土曜日で、休日の俺は、とある場所へと向かっていた。
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