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「えっと、どうしました?」
「あっ、いや、ごめん。………その、この事は誰にも……」
「あ、はいはい、大丈夫ですよ。こっちも覗いてたし、お互い様ってことで」
そう穏やかに言うと、彼はホッとしたように肩で息をついた。
「きみはもしかして、真田君のことが気になって……?」
彼の問いに、そりゃそうなるか、と泉流は心の中で嘆息した。
「や、違うよ。あんな鉄仮面ごめんこうむるというか、逆に殺意が芽生え……ゴホンゴホン、まっ、まぁ、和香子ちゃんを見守っているのですよ。あなたは、まぁ……聞くまでもないか……」
ハハッと泉流は苦笑する。
二人の告白現場を覗いて涙する男子なんて、そんなの当然和香子が好きだからだろう。
現に、和香子を好きな身の程知らずは他にも大勢いる。
彼もまた然り、だろう。
(残念だったな少年、和香子ちゃんは君のような男に手の届く女の子じゃないんだよ)
心の中でそう付けたし、哀れんでやる。
すると、彼はふっ、と困ったように笑った。
「いや、俺は違うよ。あんな子、タイプじゃないし」
「はい?」
あんな子呼ばわりされ、思わずカチンと来る。
「へー、ほー、失恋したからってあんな子呼ばわりですか、そーですか」
その返しに、向こうもカチンと来たのだろう、語気を強めてきた。
「そちらも颯介に失恋してやせ我慢してるんじゃないですか?やたらとディスってるけど」
「ディス……!?というか、誰があんな図体デカイだけの無愛想男を好きに?ありえる訳がない。面白い冗談だね。そういうあなたもね、神聖すぎる和香子ちゃんに手が届かないからって八つ当たりもいい加減にして欲しいねホント」
「颯介がデカイだけって……負け犬の遠ぼえですか?見苦しいですねあなた。俺はあんな可愛いだけでなにも出来ない女の子になんて全く興味ありませんから」
可愛い顔をして意外にもズケズケ物を言う彼に怯みそうになったが、こちらも負けてられなかった。
「カッチーン。今カッチーンって来ましたよこれ。和香子ちゃんが何にも出来ないと?スケベで幼稚で汚い種族の分際で何を言ってるんだか…。これだから男ってのは嫌なんだ。真田颯介もまた然りだよ」
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