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この世は
奇っ怪なことで溢れている。
「……」
「……」
図らずとも、夜と沖田の考えは一致していた。
周りを見ればごった返す人々の波。
上を見れば空など拝めず、天井が映る。
「……夜、何これ」
「……分かりません」
生まれて初めて見る光景に沖田が目を瞬かせる横で、夜は頭を抱えたのだった。
元々、先程まで新撰組の屯所に居たはずだったので、何故こんな人混みの中にいるのか。
(此処は……未来?)
周囲の店、人々の格好は久方ぶりに見るもので、懐かしく感じる。
だが、全く知らない場所だ。
呆然と二人して立ち尽くしていると。
ドン、と沖田が一人の男にぶつかる。
「何ボーッと突っ立っとんねん。自分ら邪魔やで」
「は? 今君からぶつかって……って異人!?」
「は、偉人? 何意味わからんこと言うてんねん。ていうか、その格好何や?」
「それは此方の台詞だよ」
と言って殺気を強めた沖田に、慌てて夜が割り込む。
「沖田さん落ち着いてください! すみません。これ、撮影の格好で」
「はぁ?……まあええわ。気ぃつけや」
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