2人が本棚に入れています
本棚に追加
夜自身も現代のものに触れるのは久しぶりだと、少し妙な気分になりながら辺りを散策していたが……。
「……!」
「夜?」
ある場面を目に止めて、一瞬足が止まったところに沖田が呼び掛ける。
「……」
「あ、ちょっと!」
が、夜は突然駆け出し、沖田も急いで後を追った。
夜は一人の男に近付くと、その右腕を掴み、勢いよく捻り上げる。
「い"っ!? いででで!」
堪らず悲鳴を上げた男は、持っていた‘ある物’を落とした。
「何これ?」
沖田がそれを拾うと、慌てて男は逃げ出す。
夜は男は追わず、一連の騒動を呆然と見ていた一人に声を掛けた。
「この財布、貴女の物ですよね?」
「え?……あ、ほんまや! うわっ、気付かんかった………ありがとうございます!」
「財布?」
薄い黄色の長財布は沖田にとっては見慣れないものだったが。
「気を付けなよ」
「すみません」
彼女にとっては大切なものなのだと、素直に返したのだった。
最初のコメントを投稿しよう!