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転機が訪れたのはバレンタイン。
お菓子作りが得意な私は、照れながらも用意したものを渡して。
彼はそれを喜んで食べてくれた。
でも、その時。
「俺、来月引っ越すねんなぁ」
唐突に言われた言葉を、すぐに理解することは出来なかった。
頭が真っ白になりながらも聞こえたのは、全く知らなかった彼の事情。
母子家庭だった彼のお母さんが事故で亡くなってしまって。
彼は東京の祖父母の家に行くことになってしまったそうだ。
「東京の学校ってどんなんやろうなー」
馴染めるかな、なんて軽く言うけど、私は頷くことしか出来なかった。
全然知らなかったから。
いつも笑っていたのに、裏では色んなことを抱えていたことを。
何も気付けなかったことが情けなかった。
「……い、おーい」
「え?」
「だから、ホワイトデー」
考え込んでいた私に、彼はホワイトデーの日に会わないかと誘ってくれたのだ。
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