第1章

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私はそれらの商品を乗せるトレイは持たずに、パンの前はスルーしてレジのお姉さんのところで「アメリカンひとつ」と言った。   私はコーヒー豆の種類なんて解らない。味も然りで、砂糖ふたつとミルクをたっぷりめに淹れるので元々の味なんてものがかき消されるのだ。   昔読んだ小説の喫茶店で「アメリカン」とOLが事務的にオーダーしていたシーンが、私の頭にインプットされている。クールでスマートなその姿勢に私は憧れを抱いた。 それからはずっと、私がコーヒーをオーダーする時は「とりあえずビール」がごとく「とりあえずアメリカン」なのだ。
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