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太陽みたいに笑うってこういうことなんだなと、しばらく古手川さんの笑っている顔をポーッと眺めていた。
見られるのに慣れてないのか、古手川さんの顔がみるみる赤くなって、しまいにはゆでダコみたいになってしまった。
さっきまでの私みたいだ。
「あんまりこいつをからかうんじゃねーよ。」
頭の上から声がする。ゴツゴツした指が頭に当たる。
嗅ぎ慣れた匂いが自分の側から漂った。
古手川さんの目が一気に冷え切った。
「さいとー。何の用だよ。」
先程とは打って変わって冷たく鋭い声。
威圧感のあるたたずまいにもどってしまった。
「残念ながら、あなたの嫌いなサイトー君は君の大好きな高梨の顧問なんだなー。」
「なっ、、、!」
大好きという言葉にだけ反応して、私の顔がみるみる赤くなる。
「クソッ。」
古手川さんは吐き捨てるようにそう言うと、何処かへ走り出してしまった。
「あーれまー。行っちゃったー。からかっただけなのにな。」
能天気な声が頭からする。
恥ずかしさと怒りと色々入り混じったまま、クルリと方向をかえ、斎藤先生の方を向いた。
「先生。私、古手川さんに話すことあったのに。」
頬を膨らませて言うと、
先生は私から自然に一歩キョリをおいた。
チクッ。
見えない針で刺されたみたいに、また胸が疼く。
「あれま。高梨がお怒りだ!」
おちゃらける先生にいじける振りをして、スタスタとあるいて美術室に向かった。
すると先生も他の先生に呼ばれたのか、いつの間にか横から消えていた。
虚しさが胸に残った。
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