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#1
「しーらかーわせんせー!きゃーーっ!」
昼休みに窓を覗くのが、私たち白川先生応援団の日課となっていた。
グラウンドを駆ける若干27歳の若先生はこの秘密の花園の王子様だ。
グラウンドに巻き上がる砂埃が目に入りそうになりそっと目を伏せた。
再び目を上げると、当に試合は進んでおり、相手側のチームがゴールを決めようとしている所だった。
「うわー、またあいつかよ。運動バカのくせにでしゃばりやがって。」
不意に聞こえた友人の声で誰がボールを持っているのか一瞬で想像がついた。
古手川さんだ。
短く切り揃えた髪が風と土埃のなかで華麗に舞っている。
なぜか美しいとかんじた私はしばらく古手川さんの事をみつめていた。
あまりにも私が見ていたからなのか、
それとも友人達のつめたい視線に気付いたからなのかわからないが、古手川さんがこちらを振り返りをキッと見つめた後すぐさま、強いシュートを放った。
綺麗な放物線を描いたボールはゴールポストから僅かに右へそれた。
と、同時に予鈴を告げるベルが鳴った。
あわてて席に戻り、授業の準備を始めた。
一瞬目に写った古手川さんのなんとも言えない表情がなぜか頭に残った。
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