キミの知らないこと。

#1

「古手川さん…」

そう、私が呟くと友人達は一斉に私の視線の先を睨んだ。

「高梨さゆり。ちょっと、来て。」

古手川さんは威圧的に見えて、でも私がその瞳を見つめると不意にフッと柔らかくなった。

そんなことに気付かない友人達は、口喧しい程に古手川さんの事を罵った。

『さゆのことを連れてくな！誑かすな！白川先生のなんなんだ！おまえは！』

そんな彼女らの声は私達に届く前にストンと壁に跳ね返されたかのように聞こえなくなった。

「どうしたの？」

ジッと私の目を見ながら彼女はポツリと話し始めた。

「お願いしたい事がある。」

まるで、犯罪の片棒でも担いで欲しいのかと思う程彼女の目は切なげで何かを躊躇うように見えた。

「私でよければ。」

彼女の不安を無くそうと、精一杯の微笑み顔をつくった。

古手川さんは私から目を離すことはなかった。

「それで、その"頼み事"とはいったい…？」

彼女が困ったように笑った。

コホン。っと渇いた咳払いを一つして、
古手川さんはまた先ほどの真剣な目に戻った。

「高梨に絵を描いて欲しいんだ。」

私はびっくりして暫く固まってしまった。

「なんでまた…私に、、、しかも絵？」

「そう。高梨にしかできないんだ。」

ただの絵じゃないことは、彼女の反応をみればわかった。

「ちなみに…何を描けばいいの？」

「ヌード。」