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「ごめんね、突然。ありがとう。」
ーーっと、たかねー別人なんですけど!
岡田くん(と、勝手に呼ぶ)を見る目が、僕とは全然違う。キラキラしている。ウルウルしている。そうか、たかねーは恋をしてるんだな。
「うん、大丈夫だよ。なんか、フラワーパーク行くんだって?」
「そうなの、仁菜ちゃんの提案でね。で、今ここの人数が7人だからまーくん合わせて8人でしょ。みんなで一緒に行きたいなと思って。」
「いいね、今日天気いいし。観覧車とか乗ろうよ。」
「ありがと!まーくん。」
たかねーは岡田くん、いや、まーくんの腕に手を回した。まーくんの袖が少しまくれて、そこに、無数の引っ掻き傷が見えた。
この幸せそうな美男美女のカップルの影を見てしまったようで、僕はそれを記憶から抹消できればいいのにと思った。
そんなわけで、まーくんのノアに乗ってフラワーパークまでやってきた。
忘れそうだが僕は適応障害で、こんな予定外の外出は少々不安。
自販機でミネラルウォーターを買って、隠れて薬を飲んだところを、仁菜さんに見られた。
「世知くん、大丈夫?突然連れ出しちゃったりして、わたし、ごめんね。」
「そ、そんな、大丈夫だよ、仁菜さんっ!リハビリなんだ、僕の。いつまでも同じじゃいられないから。」
「うん、みんないるし、大丈夫だよ。」
仁菜さんが、にっこり笑う。
ああ、この笑顔が大好きだ。
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