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一面の芝生に、チェックのシートを敷いてサンドイッチを食べてる。ちょー平和な光景だ。周りでは親子連れがバドミントンをしたり、サッカーをしたり、自転車に乗ったりしてる。
地球のどこかでは戦争したりしてるのが、ウソみたいに平和だ。
「美味しいサンドイッチだ。ワインが飲みたい。」
8人のひとり、おとーさんがボソっと呟いた。
「だーめ、おとーさん断酒中でしょ。」
仁菜さんが、コラって顔をして、めちゃ可愛いと思った。
この、おとーさんて人は50代くらいの渋いおじさんで、声がソフトバンクのお父さん犬に似てるんで、みんなからおとーさんと呼ばれている。
アル中の治療中で、ケアセンター内にある断酒の会に通っている。
「あたしも飲みたいなあ。ワイン。」
「和希ちゃんは未成年だから、絶対ダメ!」
また仁菜さんにコラ顏されてるのは、和希ちゃん。和希ちゃんはまだ16歳。いわゆるヤンキーで、小学校からシンナーを吸っていたらしい。今は止めているけどその影響なのか、学校では学力が追いつかず、現在は不登校。ヤンキーっていうと、僕の最も苦手とする人種なんだけど、和希ちゃんは、ものすごくいい子で、大好きだ。
カフェうつつの常連客は、みんな心が病んだり疲れたりしていて、単純だけど、僕だけじゃないって安堵する。
病気のことを軽く話して笑いあえるなんて、夢にも思わなかった。
傷の舐め合いだと言われてもいい。ほんとに救われたんだ。
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