ケアセンター

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ケアセンター

ケアセンターには週3回通ってる。 正確にはストレスケアセンター。心療内科の隣に隣接してて、なんてゆうか、心のリハビリ施設?みたいなところだ。 もう2年通ってるから、馴染みの看護師さんに馴染みの患者さんがいて、落ち着く場所ではある。でも長く通う場所じゃないことは、心の何処かでわかってる。 「世知くん、おはよ。」 「あ、おはようございます。」 いつもの看護師さん。 40代くらいかな?これくらいの女の人は落ち着く。 そういえば、今日のカフェの彼女は20代後半くらいかな。 綺麗、というか可愛らしい人だったな。 久しぶりにいいドキドキだった。 だってさー、スミス好きなんだよ? 絶対趣味いいよー! 「心ここにあらず」 「え!あ、すいません。」 僕は血圧を測ってもらうため腕を差し出した。 「珍しいわね、なんかいいことあったっぽい。」 「あー、まー、当たりですね。」 「えー!ちょっとなになに?」 「あはは」 笑ってごまかしたのは、きっと普通の人にはたいしたことない出会いなのかなって思ったから。 「せしるー」 「あ、あーちゃん元気?」 この小柄な女の子は山口あずきちゃん。 19歳だけどもっと幼く見える。いつもニコニコ人懐っこくて犬みたいな子だ。 「せしる、聞いて。こないだ私、外出できたんだー。かなたくんとね、美術館行ったんだ。」 「すごいじゃん!退院ももうすぐだね。彼方くんは元気だった?僕もう半年くらい会ってないなあ。」 「うん、元気だった。私かなたくんと結婚したいんだあ。」 「うーん、お父さんを説得すんのが大変だろうね。あーちゃんとこ、お父さん溺愛してるから。」 あーちゃんは絵の才能がすごい。 絵だけじゃなくて芸術的な感性が常人じゃない。そんなあーちゃんを、絵なんか描いて何になるという大人どもから、唯一お父さんだけは、あーちゃんを好きにやれと守ってくれていた。 守って守って大事に感性を養わせ、膨らみきったあーちゃんの感性は、ある時プツンと切れた。 クラシックのコンサートホールで倒れた後は、映画館や美術館でも何度か倒れ気を失った。 精密検査をしても異常はなく、このストレスケアセンターに入退院を繰り返している。 「かなたくんの腕、きれいなままだったよ。」 「よかった。あーちゃんがいるからだね。」 「えへ。」
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