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「私は若い時完璧主義者でね。」
千代さんが話し出した。
「なんとか家庭と仕事、両立してやろうって頑張ってたの。でも夜勤のある仕事でしょ。夫と子供と姑さんの家事をして、ぐるぐる目まぐるしい毎日。姑さんはずっと家にいるのに、何も手伝ってくれないし、外では私の悪口をいいふらしてる。それを30年続けたら、ある日ぷつっと糸が切れたみたいに家を出ちゃってたの。毎日部屋にこもって泣いてたわ。でも夫は私と来てくれた。だから立ち直るためにケアセンターに入院したの。」
「ケアセンター?もしかして、おきつストレスケアセンター?」
「そうよ、知ってる?」
「だって僕いまそこに通ってるんで。」
「えっ、せしるっちも?ニナちゃんもそこで入院してたのよ。」
え!と僕はコーヒーを淹れてる仁菜さんを見た。
「ニナちゃんとはそこで出会ったの。退院してからは会ってなかったけど、カフェを始めたって連絡もらって嬉しかったわあ。」
千代さんは仁菜さんを見て、仁菜さんも千代さんを見て、2人ともニッコリと笑った。
「どうゆうわけか、似た者どうしが集まっちゃうカフェみたいね。」
仁菜さんは僕を見た。
すごく優しい表情で。
ちょっと哀しげな瞳で。
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