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何もありませんがと、お茶とお茶うけの菓子でもてなされて、少し休んだあとに、件の隕石を見せてもらった。 隕石というと、大気圏を突入するさいに、真っ黒に焼けたような石を想像していたが、この石は、緑色のような、玉虫色のような、不思議な色の隕石だった。ただ、エメラルドのような輝きはなく、鈍く光っていた。 「知り合いに、こういう隕石を研究しているヤツがいるんです。よろしければ、これを一つ、お譲り願えないでしょうか?」 そう申し出ると、快く承諾してくれた。 「この村では、流星群が見られる夜、度々、隕石が落ちてくるんです。今夜はその流星群が見られるはず。この村では、空気が澄んでいるので、肉眼ではっきり見えますし、先生のものに比べたら恥ずかしいくらい精度の低いものかもしれないのですが、我が家にも天体望遠鏡がありますので、ご使用ください。」 「ありがとうございます。楽しみです。」 私が満面の笑みでそう答えると、心なしか、彼女が赤面したような気がした。 私の著書のファンであるということは、私のファンに成り得ることもあるわけで、若干の下心が無いとはいえない。  彼女はそれまで、村を案内しますというので、私は喜んでお供した。玄関を出ると、地面がグラリと揺れた。 地震?まただ。外に居るには問題のない程度だが、確かに体に感じるほどの揺れはあった。 「最近、地震が多くて。怖いですね。」 私が世間話のように、彼女に告げると、彼女が曖昧な笑みを返してきた。 彼女は、この揺れを感じなかったのだろうか。  村の案内とはいえ、本当に何も無い所だった。これといった産業もなさそうだし、農業の方も見てのとおり、何も作物を育てていそうもない。私はただただ、彼女と、この荒れ野のような畑の一本道を山の麓へと歩いて行った。そんな私を見透かすかのように、彼女が口を開く。 「何も無いところでしょう?今年は、世愚外素生誕の年なので、作物は植えてはならないことになっているんです。」 突然、彼女が聞いたことも無いような言葉を口にしたので、私はきょとんとしてしまった。 「ヨグソトス?」 私が聞き返すと、彼女は一瞬間を置き、静かに話し始めた。
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