カフェイン好きな彼

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「-っ」  そこから先は、言葉にならなかった。  途端に視界がぼやけたのが分かる。 「よしよし」  次の瞬間、その言葉と共に温かい手のひらが自分の頭上にふってきたのが分かった。 「だから、貴女は現院長の選択が許せないんですか?」  何の感情もまじえない、平坦な声音の声で彼は問う。  慌てて、「そうではない」と頭を振った。 「・・・あの時は、仕方なかったことくらい分かってるわ」  現院長は、前院長の妻だ。そして、前院長がこの病院をどれだけ大切にしていたのか知っている。妻である彼女が、どれほど夫を愛していたのかも。  だからこそ、彼女が自分を犠牲にしている姿を目の当たりにするのが辛かった。
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