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「それにしても」
「?」
彼女は携帯灰皿を出して煙草をしまうと、溜め息を吐いてこちらへ顔を向ける。
「貴方とはしょっちゅうここで会うけど、実は暇なの?」
「ご冗談を」
多少大げさに、身振りを加えて首を振って見せると、彼女は少し笑ったように見えた。その様子に、内心ホッとしながら続ける。
「貴女も知っているでしょう。救命センターは、戦場みたいなものです」
「ああ。まぁ、そうね」
「ここには息抜きに来ているんですよ。貴女も一本どうですか?」
そう言って、白衣のポケットから缶コーヒーを二本取り出し、そのうち一本を彼女に差し出した。が、彼女は眉を顰める。
「私、ブラックって無理なのよね」
「おや、残念」
苦笑して肩を竦めると、傍のベンチに座って手にした一本をポケットにしまい、自分用のコーヒーのプルタブを開ける。鼻歌混じりに缶に口を付けると、彼女は呆れたような眼差しを自分に向けてきた。
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