カフェイン好きな彼

4/8
前へ
/15ページ
次へ
 またその話か  うんざりと眉を顰めた私の変化に気づいているのかいないのか、彼は楽しそうに言葉を紡ぐ。 「知ってます?肺がんの発生率は、喫煙する人とそうでない人では、四倍以上違うそうですよ?」  ・・・このドSめ  腹が立ったので、反撃に出ることにした。 「知ってるわよ。私の父は、肺がんで亡くなったからね」 「そうだったんですか」  案の定、彼は虚を突かれたような顔をしている。  もう少し、揺さぶりをかけてみるか 「私が大学生の時にね。で、家が小さい町工場をやってたせいで私は大学を辞めなきゃいけなくなって、その時に前院長に秘書として雇われた、ってわけ」 「それはそれは」  彼はそう言うと、伏目になって再び缶に口を付ける。  話しているうちに、自分でも当時のことが思い出され、次第に声が潤んできた。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

184人が本棚に入れています
本棚に追加