上山優子1

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「ご、ごめんね。ちょっと友達とーー」 『優子。帰ってきてから話は聞くわ。 早く帰っておいで』 「……はい」 うわー。お母さん、怒ってます。声で分かります。テンションで分かります。 そうとうご立腹でございます。帰ったら説教部屋でございます。 「す、すぐに帰ります」 『よろしい。待たせていただきます』 「……すみません」 私は終了ボタンをタップして電話を切った。 はぁ。帰ったらお説教です。せっかく盛り上がってたのになぁ。 「ごめん、朋美。私帰らないと……」 私は振り返って、三面鏡を見た。と言うより、朋美と三面鏡が視界に入る予定だった。朋美を見たつもりだった。でも、三面鏡を見た。 三面鏡が見えた。 いや違う。三面鏡だけを見た。三面鏡だけが見えた。三面鏡しか目に入らなかった。 三面鏡しか、なかった。
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